政府が「フリーランス保護」を進める背景 業務委託の契約フロー見直しも必要に?
2021/1/27更新
中小企業庁は、昨年末に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」の案をとりまとめた。フリーランスの保護を目的としたもので、取引内容が独占禁止法および下請法の対象となることを明記。「契約内容の書面交付をしない」「取引条件を一方的に変更」等に違反した場合は、罰則の対象となる。
なぜ、このタイミングで新たなガイドラインを示したか。まずは、新型コロナウイルス感染拡大の影響が挙げられる。イベントの中止が相次ぎ、契約書がないばかりに発注キャンセルに泣き寝入りせざるを得なかったフリーランスが続出。日本俳優連合は昨年9月に公表したアンケートで、俳優の3割が「契約書がない」と回答したことをもとに公的支援を訴えている。また、内閣官房が昨年2~3月に実施した調査で、契約内容が書面やメールに残されていなかったなどの経験をしたフリーランスが約6割にものぼったことも大きい。
ただ、本丸はやがて訪れる空前の人手不足への先手だ。団塊の世代が全員75歳以上となる2025年まであとわずか、すでに生産年齢人口は3年連続で6割を下回った。つまり、生産年齢人口の対象である15~64歳だけに労働力を期待するのは困難な状態だということ。今後、これまでフリーランスとの取引をしたことがない企業も、それを検討せざるを得ない可能性が高い。ガイドラインと併せて契約書のひな形まで示したのは、そうした企業でも戸惑わないようにという配慮ではないか。
これまで業務委託契約を交わしたことのない企業は、契約書の体裁のみならず、契約の際に踏まなければならない“手続き”をチェックすべきだ。できれば、人事・労務関係の法務を見直しておく好機と捉え、コンプライアンス強化の一助とすることを勧めたい。